※ 18禁です。

※セルフ学園パロディネタ 家庭科教師×保健室の先生

 

 

 

冬が終わるころの話

 

 

 きゃらきゃらと小さな娘の笑い声のように、手に提げている鍵束が鳴る。貴海はまとめて握ることによって音を押さえると、薄暗い廊下を歩き、保健室の前で足を止めた。

 扉の隙間から明かりがこぼれている。この時刻になっても、保健医は仕事にいそしんでいるらしい。生真面目さに息を吐く。

 家庭科教師である貴海は、すでに帰りの支度まで終えているのだが、まっすぐに帰らない理由はこの部屋の主を待つためだ。

 すでに教師たちに限らず、学生のあいだでも公に認められている、婚約者。ファレンを一人で帰すなど心配でたまらない。

 他の教室と違う引き戸を横に滑らせると、ファレンが音に気づいて視線をくれた。笑う。

「待たせているな。あと一件ですむから」

「ああ」

 いくらでも待とう、と貴海は保健室に入るとファレンの隣の椅子に腰を下ろす。視線を気にせずに、保険医であるファレンはペンを紙に滑らせていく。最後の行を埋めてから、穴を空けてファイルにつづった。

 そのあいだ、貴海が顎に手を添えながら見ていたのはファレンのうなじや、首に巻かれたチョーカーから鎖骨までのわずかに露出された白い肌だ。どこでも節操なく発情するわけではないのだが、ファレンが相手だとついそんな些細な場所から火をともされてしまう。

「……貴海」

 苦笑交じりの声は男の紫煙の目にちらつく燻りに、気づいているためだ。

 ファレンは体を寄せるとささやいてくる。

「衛はもう帰ったのか?」

「鍵は引き受けたからな。ここにいるのは、俺たちか。理事長くらいだろう」

 神出鬼没という言葉があてはまるほど自由な学園のトップはどこにいるかわからない。かといって、ここでのやりとりを除くほど品のない者でもない。

 だから。

 貴海は手を伸ばす。ファレンの細い首筋をさらって、より細やかな桜色の髪をすくっていった。

 ファレンは貴海の手を拒まずに添えてくる。

 見つめた瞳の先にある潤む金色に何度目かわからない嘆息が生まれた。徐々に距離を縮め、口づける。やわらかいがはりのある感触が気持ちよい。まだ閉ざされている唇を開けようと舌でつつけば、案外簡単に招いてくれる。ちろちろと顎の上や、歯の裏をくすぐると体を震わせるので、抱き寄せてから唇を離した。銀の糸がもったりとつないでいる。

 は、と呼吸をするファレンに沸き上がる愛おしさへ名前が付けられない。かわいい、やたべたい。など腹の底でねじ曲がっていき、結局は自分への吐き気へつながってしまう。

「貴海」

 動きを止めたのを心配もせずに、ファレンは貴海の指を取った。自分の口に運んでいき、微かな音をたてて吸ってくる。唾液にまみれていく自分の指とファレンのなまめかしさに、喉が鳴った。

 これからどうしよう。

 そんなのは、決まっている。

「ファレン……」

 懇願するように名前を呼べば、何もかもわかっていると微笑まれた。

 

 

 

 保健室には「使用注意」と語り継がれているベッドがある。それは貴海がまだこの学園の学生だった頃から続いている伝承だ。

 昔、このベッドで横になった学生がそのまま目を覚まさなくなった、という怪談じみた話だったと記憶している。

 だから、四つあるベッドのうちの一番右奥にあるそのベッドは誰も使いたがらない。あまりないが、三つのベッドすべてが埋まっていたら学生は、即座に帰宅を選択するらしい。

 そんな与太話に乗っかって、貴海とファレンは、一番右奥のベッドにいた。ファレンは組み敷かれて貴海は、その上に覆いかぶさっている。

 なんてうつくしいひとなのだろうか。

 ワンピースを腹のあたりまで剥かれ、下に着ていたシャツも放り投げられたファレンを見つめながら貴海は毎回、恍惚の吐息をもらす。

「お前にもらった下着をお前が脱がせてくるのは……ぞくぞくするな」

「煽るのか」

 答えずにくすくすと笑われる。

 貴海は目の前にあるライラック色の下着のホックを外す。丁寧に胸を支えていたものがなくなり、ファレンの豊かな乳房がふわんと姿を表した。すでに先端が硬くなっているのを指先で確かめる。ファレンは唇を引き結んで、その刺激をこらえていた。

 何度もはじき、頷く。それから胸の先を口に含めた。何度も水音を立てさせて吸う。そうなると細い腕が頭に回された。

「ふふ……あかごみたいだ」

 もっと吸えば良いと押し付けられるので言葉に甘えた。顔に当たるきめ細やかなふくらみが心地よい。口は一つしかないから、右胸は手で転がしていく。

 口で感じる硬さと、指から感じるつぶらさ。俺の体の下にある足が、もどかしげにこすりあっている。

 貴海は顔を上げた。ファレンの胸は両方とも赤くなってしまっている。もう少しいじめたくもあったのだが、貴海はファレンのタイツを破かないように気をつけながら、丁寧に脱がしていった。くるくると丸まったそれもベッドに放り投げて、つま先をしゃぶる。

「きたないぞ……?」

「そうかもしれない」

 答えつつも、足の甲、ふくらはぎ、膝のあたま、まで口づけていった。唾液が染みついてそこらのあたりだけ、さらにはりが生まれる。

 了承も取らずにワンピースを脱がしていくが、文句はこなかった。薄い青色のシャツと、あらわな胸、まだ脱がされていない紐で結ばれた下着のみをつけているファレンは。たいそういやらしい。

 愛しい人の姿に欲情する自分を浅ましく思いながらも、貴海はファレンの下着をはぎとった。

「いつから濡らしていた」

「覚えがない」

「はしたないな」

「そのとおりだ」

 ファレンは自分の体を抱いて、斜め下から見上げてくる。

「こんなところで情事に耽るなど、いけない先生だろう?」

「なら俺も同じだな」

 言葉を返しながら、ファレンの両脚のあいだに頭をうずめる。甘いあまい匂いが鼻をくすぐる。こればかりは怖気を覚えない。女というには清らかで、雌というには気高い、貴海を惹きつけるファレン特有の匂いだ。

 たまらず、という様子で液体をすする。そうなるとさらにとろけた液体が溢れてくる。いくら喉を潤してもすぐに蒸発してほしくなってしまう、くせのある液体だ。

 閉じそうになるファレンの脚を強引に開かせて、液体を舌ですくいとり、ファレンの肌にこすりつけていく。刺激されればされるほどに恋口はぱかりと開いていった。

「ん、たかうみ……おまえのは、しなくてもいいのか……?」

「してくれるのか?」

「どちらでも」

 ふむ、と貴海は考えた。

 どうしよう。

「やめておこう」

 掃除が大変だ、と言い訳をつければファレンは不思議そうに首をかしげる。

「飲みきれるぞ?」

 思わず唇を注視してしまう。薄い、紅の落ちた赤い唇が俺の淫猥に触れて、胎に一滴残らず落としきれると誘ってくる。天然の仕業だろう。

 誘惑にかられつつも貴海は首を横に振った。そう言うが白濁がベッドに染みついたらまた義父に、儚い笑みと共に注意されてしまう。実父がそれを楽しそうに酒を片手に眺める様子まで浮かんだ。

 貴海は再びファレンを押し倒す。ファレンは空いた手で貴海の耳や、神をくすぐってくるのでその刺激には目をつむりながら耐えた。

 ファレンが俺に触れたいと手を伸ばしてくれるのは嬉しい。自分ばかりが求めている呆れにつながらなくて済む。少しだけ、性への嫌悪感も薄まってくれるから。

 貴海はしばらくファレンの鎖骨付近に赤い痕を散らしていた。それから、またファレンの愛好口を指で押し広げる。くぱり、と粘液を垂らして開いたそこに自分のまだ隠されている雄が押し入りたい、と主張してきた。

「たかうみ、は。ここを汚したくないんだな?」

「ああ」

「そうか」

 うん、と頷いたかと思えば、ファレンは貴海の胸板を押し返す。貴海がよろけつつ、あぐらをかくような姿勢になると、ファレンはズボンのジッパーに手を当てた。

 ちちちち、と音を立てて下げ終えたあとに、ズボンのベルトを緩めてくる。貴海はこの先は予想できるので、ファレンに任せた。

 雄が顔をのぞかせる。蒸れた匂いのたつだろう醜物に、ファレンは一度だけ口づけた。貴海は片方の目をつむる。

「すまないな、お前のご主人様が今日は勘弁してくれと言ってきたからなあ」

「どこと会話しているんだ」

「ふふ」

 細い瞳孔の瞳を細めて悪戯っ気に笑う。

 そんな姿も可愛くて仕方がないのだからしょうがない。

 ファレンは貴海の肩に手を置くと、ゆっくりと腰を下ろしていく。ちゅぱ、と愛好口と貴海の雄が触れ合っていた。

 熱い杭のようなものが、ファレンの細い体に穿たれていく。

「ん、あぁ……ふ……」

 騎乗位とは違う、対面座位といった姿勢だろうか。ファレンは膝を立てて、曲げて、ゆっくりと雄を召し上がっていく。熱い膣に飲みこまれていく感触は気持ちよさと怖気が紙一重だ。

 歯を食いしばり、ファレンの細い腰を抱いて耐える。

「………!」

 貴海が声のない悲鳴を上げているのに気づくと、ファレンは額、瞼に口づけをしてくれた。風の音が怖いと駄々をこねる幼子を寝かせる母親のような口づけだ。あたたかくてとろけてしまいそうになる。

「あと、もーうすこしだぞぅ……?」

 言われてみれば、大半がファレンの中に飲みこまれてしまっている。もう少ししたら、臀部と腿が触れ合うだろう。

 その瞬間を思うだけでまた痺れが走った。

 ファレンは貴海の首に腕を回して、ず、じゅりと腰を落としていく。そのあいだも余裕は失われない。ファレンを折れるほど抱きしめながら、息を荒くしている自分こそが、滑稽だと貴海は自責する。

「ふ、はぁ……あ……うくぅ……!」

「ほーら。はいったぞ……」

 ぱちゅ、と音がしたあと、ファレンは動かなかった。足を広げて貴海をまたぎ、腹中に雄を納めきれたことに満足している。獣がすり寄るように貴海がファレンの胸に顔を寄せると、頭を撫でられた。

「よくできました。貴海先生」

「………」

 こんなときにその呼び名を出してくるのはずるいというものだ。

貴海は、血走った目のままファレンをにらみつけて、腰を跳ね上げさせた。

「あ……!」

 ファレンの回してきた腕の力が強くなる。それに口元を吊り上げて何度も、何度も叩いてやった。膝の上で振動に耐えるファレンをさらに痛めつけてしまいたい、という欲が浮かぶが、こらえようとする。

 いとしいひとだから。大切にしたいから。

 貴海がまた自身の中で引き裂かれそうになっていると、その均衡を壊すささやきが流れ込んできた。

「して、いいんだぞ?」

「して、いいのか」

 小さな顔を立てに動かして承認された。

 貴海は歯を食いしばった後に姿勢を変える。ベッドにファレンをまたはりつけて、細い体に繊細な律動を仕掛けた。最初はゆっくりと、抜きかけてはまた膣内を舐るように戻し、時に奥をこじ開けるばかりに貫いていく。ファレンはどの動きに対しても誠実に従ってくれた。

「あ、あぁ……んん……! はぁ、あ……」

 やわらかい体は貴海の乱暴な躾をすぐに覚えこむ。引いては名残惜しそうに離れ、また奥に沈み込むとさらに奥へと自分から招いてくれる。

「は、あぁ……うぁ……ファレ」

「ん、く、ふぁ……んん……?」

 互いの動きが、一対の翼がはためくように、合わさっていく。同時に同じ舞踏をしているように、呼吸が重なりあう。

「っく。あいして……る……!」

「そんなの。おれ、だって……」

 ファレンは腹に力を込めて顔を上げて、貴海は身を前に傾けて口づけた。互いが欲しくてやまない。求めて終わらない。

 限界点は、ファレンの腹中にたっぷりと精液を吐きだしてだった。

 射精の余韻に震える貴海をなだめながら、また、とろけるような言葉が注がれていく。

「いっぱーい。だせたぞ……はらむかもなぁ……」

 ぞくぞくと貴海の背中が震えてしまう。

 腹を撫でるファレンの手に、自分の手を重ねた。ここにいま、自分のありったけの欲が詰まっているのかと思うと。

 泣きだしそうな心とは反対に、口角はひきつっていた。

 

 

 貴海とファレンの家までは、学園から数分だ。

 その道のりを貴海はファレンを背負いながら歩いていた。

 ファレンは「歩ける」と主張したのだが危なげなステップを踏むので、耐え切れなかった。だから強引におぶっている。

 冬の空気は薄れているがまだ肌寒い。触れているところが温かく心地よいくらいだ。白くなくなった息を吐きだしながら、貴海は言い淀んでいる。

「貴海」

「なんだ」

 「今日もきもちよかったなあ」などと明るく笑って言われたものだから、吹き出しかけた。たしなめようとするのだが、誘いに乗ったのは自分なのでなんとも注意しがたい。

 まあ、いいかと貴海は考え直す。

 こんな厄介な自分を丸ごと愛して笑ってくれる人がいて、俺もその人が大好きなのだから。

 こんなありふれたようでいて奇跡のような出会いは、きっともう、ないだろうから。

 大切にファレンを抱きかかえていたい。

 貴海は微笑んで、また一歩を踏み出した。

 

 

 

2018.2.23 初出