※ 18禁です。

※貴海×ファレン

 

 

 

夜は甘く熟してく

 

 

 貴海が家に帰るとファレンが猫になっていた。

 その表現は正確ではない。ファレンの姿は人のままなのだが、桜色の髪に三角の耳を付ける、もしくは生やしつつ、パーカーしか着ていないという格好だ。パーカーは腿の半ばまで丈があるが、後ろ姿を見ることは許されない。脚に絡む尻尾がおそらくめくりあげてしまっているだろう。

 冷静に、貴海は自分の目を疑い、こすって、また自分のベッドの上のファレンを見る。

「にゃにゃうみ?」

 鳴いた。

 俺の中のファレン可愛いアイデンティティを揺らがせる非常事態に直面してしまった。いや、普段のファレンも男性が主にする言葉遣いと相反するような、髪をかきあげる女性らしい仕草、たまに絡めてくる腕など愛おしいところは説明しきれない。

 だが。このファレンは危険だ。パーカーの下からちらちらと見える黒い下着や足に絡めている尻尾など、簡潔に言うとえろてぃしずむの塊を溶かした紅茶だ。

 ファレンを成す、あらゆる液体や肉を食んでしまいたい。唇で触れて、歯で噛んで、舌で味わって飲みこんでしまいたい。その想像だけで気持ち悪くなっているため、この欲求は食欲ではなく性欲だと思い知らされた。

 ただの食欲では性欲を忌避する貴海も気持ちまで悪くなることはない。だから、ファレンに抱くこの感情は紛れもなく性欲だ。

「ファレン」

「……にゅまにゃ」

 すまない、とファレンが言いたそうにしていた。それを遮って貴海は大股でベッドまで近づき、ファレンを抱きしめる。

 やわらかい。あたたかい。いいにおいがする。普段の澄んだ花の薫りではなく、甘い乳のような匂いを漂わせている。そのまま首筋に顔をうずめると頭を撫でられた。ぺろりと、鎖骨をたどった後に顔を上げる。

 いつもの「しかたないなあ」に甘酸っぱいときめきを乗せた表情をファレンは浮かべていた。

 この状況に照れているのか、それとも恥ずかしがっているのかはわからない。

「ファレン……その、いいか?」

「にゃう?」

 なにが、と言うのだろう。わかっていてあえて聞いているのではなさそうだと貴海は察する。猫の思考しかできなくなったわけではないが、普段のファレンとは少し違っているためだ。

 貴海と出逢った時から隣に並んで歩いてくれているファレンは、こんなにたやすくない。もっと落ち着きがある。判別がある。

 そこまで考えて、貴海は思いだした。

 現在、目にしているファレンの姿に重なるのは、まだ出逢ったばかりのファレンだ。言葉も使えなかった。それでも、懸命にコミュニケーションを取ってくれていた。

 草原に紛れてしまった、一輪の花のような少女だ。

 だったら「いいか?」と尋ねたことは間違いだ。体はすでに俺の愛撫を覚えているとしても、今のファレンの心は純真な乙女のものだ。

 貴海は腹の中を渦巻く気持ち悪さをこらえて、ファレンをそっとベッドに横たわらせる。そのまま寝かしつけようとした。手を、ファレンはつかむ。

「にゃーにゅみ」

「どうした、そんなに指を折らせて」

「……にゅあ」

 ファレンは一言だけ残して、唇を触れ合わせてきた。舌を絡めるなどしない、粘膜が重なるだけの、軽い触れかただ。

 呆然としているとファレンはパーカーの合わせ目を外していく。黒ではなく、紺色の生地をフリルが飾っている。腹のくびれとへそのくぼみは、昨日の貴海が愛したファレンそのままだ。

恥ずかしさを見せながら肌を見せたファレンに「これでも俺が、俺であることを疑うのか」と鳴かれた気がした。

 ならばもう、いいのだろう。

 貴海はファレンを連れていく。

 穏やかな眠りの世界ではない、密やかな快楽世界へと、ともに堕ちていくことにした。

 

 

 猫、だから。

 ファレンは四つ這いになって腰を高く持ち上げられている。すでに下着は脱がされて、着ているのはパーカー一着だ。

 尻尾はどうなっているのかと思うと、菊座の上から慎ましく生えていた。それが、脚に絡まってたびたび震える。さらに撫でるたびに身を硬くするため、感覚はつながっているのだろう。

「かわいいな、ファレン」

「にゅう」

「俺の世界で一番かわいいとしたら、ファレンしかいないくらいだ」

 などとささやくと冷めた目で見られた。

「うにゃ、にゅうう……」

 何を言っているんだとも言いたげだが言葉にできないようだ。

 貴海は、今日は徹底的に言葉で攻めてみるかと考えてみた。普段は事に及びだすと、快楽と怖気の二律背反に襲われてファレンに縋るしかできない。だが、今日の愛しい人は頭を撫でたりして宥めてくれることはできなさそうだ。

 俺ががんばるしかない。

 貴海は知らず、唇を舐めた。

 どこから触れていくかを考えつつ、目の前で四つ這いになっているファレンの尻尾を持つ。

「にゃふっ」

 びん、と触れられたファレンの背中が張った。引っ張るほどの乱暴さは持たずに四つ這いから仰向けへと押し倒す。そうして、脚を開かせた。

 すでに蜜溢れる丘が濡れているのにどうしようもない高揚を覚えてしまう。指を沈ませて、小さな粒を何度もこすりあげて極めさせてしまいたい。

 その欲求を抑えて、貴海はファレンの尻尾を菊座にこすりつけた。予想すらできないだろう強制された尻尾の動きに、瞳孔の細い瞳をさらに縦にして、ファレンは小さく口を開けた。

 入れることはしない。何度も、滑らかな毛並みの黒い尻尾で窄まりをつつくだけに留める。

「ファレン」

 名前を呼んで口づける。舌を入れればざり、と普段より痛い舌の尖りがこすれてきた。それが新鮮で、俺を傷つけまいと逃げようとするファレンの舌に絡みついていく。

 尻尾もまだ自由にはさせない。つかんだまま、湿った秘丘に触れさせる。粘り気のある愛液に触れて尻尾が濡れた。

「にゅ、にゃーうみ。にゃ。にゃ」

 貴海の尻尾をつかんでいる手にファレンの手が重なる。首を横に振ってファレンは違う、と言いたそうにしていた。貴海は尻尾から手を放して、ファレンの頭を撫でる。

「いやだったか。悪いことをした」

「に……にゃう。にゃねんにょ、にゃにゃ。にゃーうみ」

 にゃあにゃあばかりで大変かわいらしいが、何を言いたいかつかみかねる。もう一度、それらしい言葉に変換してみた。

 「ち……がう。ふぁれんの、なか。たかうみ」

 都合よく変換し終えてから、心臓が爆破されるかと思った。貴海はやわらかいファレンの胸の中に頭を沈めながらシーツを握りしめる。

 つまりは、自分すら自分の中に入れたくない。貴海だけが腹を犯してほしい。ファレンはそう訴えてきたのだ。

 変換が正しければだが。

「にゃうに?」

 いつものようにファレンはよしよしと頭を撫でてくれる。手つきの優しさと腹にしみるファレンの愛液や、絡まってくる脚に、貴海の怒張ははりつめてばかりだった。

「尻尾、またいいか?」

 ファレンは首を縦に動かした。許可を得てから貴海はまたファレンの尻尾をつかんで、強弱をつけて手の中で揉む。

 薄紅の唇からこぼれる吐息が熱を持つ。ぴん、と脚もはりだした。

 貴海はファレンの耳も同時に愛撫する。かぷりと噛みつけば、思った以上に硬い毛並みが歯にささる。

「にゅうぅ!」

「は、ファレン。……ファレン」

 耳の内側も舐めた後にファレンの膨らんだ乳房に顔をうずめる。左手は胸の先端をつまみあげて、また沈めた。たぷんとあらわになっている豊かなふくらみが、手の形に合わせて動く。

 体を一方的に触れられているファレンには不謹慎だろうが面白かった。そうして気持ちよい。

 高海はファレンの胸を下から持ち上げて、上から歯をたてる。

「ふぁあぁぁ……!」

 甘い鳴き声と一緒にファレンの脚が貴海の腰に絡んでくる。

「そんな、離れたく、ないか……?」

「にゅう……」

 伸ばされた腕が答えなのだろう。頭を抱えこまれる。とくん、とファレンの心臓が脈打っているのが伝わってきた。

 いとおしい。かわいい、かわいい。俺の中の語彙が死んでいく。ファレンが可愛いと伝えきれないほどの熱に襲われていた。ひたすらに、眼下にいるファレンが可愛くて仕方ない。

 シーツの上にちらばる桜色の髪も、一房だけ編まれた顔の横に垂れる三つ編みも大切にされてきた人形のようで。細い緑の瞳孔と金の瞳は本物の猫といってもさしつかえない。上気しているが白い頬に、薄紅の唇。唾液がてらりと光っているのが性的だ。

 鎖骨のあたりは俺がつけた痕が散らばっていて、パーカーからあふれている乳はいまも俺の呼吸を困難にしてしまうほど心地良い。腹はくびれ、滑らかな曲線を描く脚も俺をつかんでいる。

 どう動こうか。そう悩むほど今のファレンは温かくて優しくて、可愛い、

 貴海は少しのあいだ考えたあとに、ずるずるとファレンの胸から、腹、そうしてまた蜜愛滴る丘陵に顔をうずめた。ふんと匂いを嗅ぐと普段よりも濃い気がする。

「にゃあ……」

 ファレンの手が貴海の髪をつかんだ。恥ずかしいのだろうがここで引く気はない。ぱくり、と貴海はファレンの敏感な核ごとくわえて、そこを舌でころがしていった。

「にゅっ!」

 じゅ、ず、と音を立てて吸っていくとさらに体がしなる。感じているのと行為から逃れたい二つがファレンの小さな体の中でせめぎあっているのだろう。貴海はたまにつつくことも忘れずに、ファレンの蜜をすすり飲んでいた。喉を通って腹に落ちるたびに焼かれていく。同時に、液を飲んでいるのとは違う、貴海の理由で気持ち悪さも襲ってきた。

 辱めている。ファレンを、俺の意思によって辛いことをさせている。それがちくちくと腹や心臓を刺すのに、気分は高揚していった。

「にゃ、にゅうぅ! にゃみ、にゃにゃうみぃ……!」

 ファレンの俺の髪をつかむ力が強くなる。ぷつぷつと何本かは抜けていくがかまいはしない。いまはファレンが極上の液体を次から次へとこぼしてくれている。それを浅ましくすすっていたい。

「にゅぐぅ!」

 ぬめった異物を伸ばしてファレンの奥に触れて、もっと蜜がほしいと懇願する。ファレンの体はそれに応えて、また液体をとうろりとあふれさせてくれた。ずぅ、と貴海がすすって核を潰した時だ。

「……にゃ、が……ぁ……!」

 ファレンの力が、指先から、つまさきから、抜けていく。ただふるりと動き、寒さに怯えるようにかたかたと震える。べたついた顔を上げると、ファレンは荒い呼吸を繰り返していた。目が潤み、焦点が合わない。口の端から唾液が、つぅっと流れた。

「ファレン」

 血の気が引いていく。心臓が激しく動いて、吐きだしそうになるがファレンを胃から追い出したくないのでその気持ち悪さをこらえた。

 青白いだろう顔のまま、貴海はファレンを抱きしめる。貴海の呼吸も落ち着きを欠いていた。

 しばらく、部屋には二人の乱れた呼吸だけが響いていく。

 初めに手を伸ばしたのはファレンだった。貴海の顔をぺたぺたと触って浮かぶ涙をぬぐっていく。

「は、ふぅ……はぁ……にゃ、うみぃ……」

「……ファレン」

 それ以上の言葉はいらなかった。衝動に任せて唇を重ねる。

 先ほどまでファレンの下の口からこぼれる愛液が、今度はファレンの上の口を汚す。背徳が、ぞくぞくぞくと貴海の背中を這い上がっていった。

 愛おしくて、大切で、守ると誓っているものを俺が穢してしまっている。

 それが嬉しくて、誇らしくて、胸をざくざくと切り裂いていた。

「にゃう、みぃ……」

 言葉足らずに乱れるファレンの足が貴海の股間に触れる。張り詰めた灼熱に驚いたのか身を震わせて、それなのに足でまた触れてくる。くし、と前後にくすぐりもした。

「入れていいのか?」

 こくん、とファレンは微笑んで頷いた。

 貴海は取り出す。赤黒い自分の欲望は素直で、その浅ましさにまた笑うしかない嫌悪を覚える。せめて避妊の用意をするべきだったのかもしれないが、ファレンは力ない手を添えて、熟した蜜所を広げていた。

 くぱり、と開かされた口はてらついた粘液によって目をやいてくる。

「入れるぞ」

 それだけを言い、貴海はファレンの膣内を暴虐していく。一突き目から、がつんと奥まで突き当たるように雄をねじ込んでいった。

「ん―――!」

 ファレンは背中をのけぞらせる。その体を強引にシーツの上で磔にさせて、何度も腰を叩きつけた。皮膚が当たり、こすれる乾いた音が立つ。

 じゅく、にゅる。ぱちゅん! といった卑猥な音が耳を犯していく。十分に濡れた雄と雌がまぐわいあい、さらに液体を溢れさせていった。透明な先走りから白濁の精液へと変わったものが、ファレンの中を犯していく。子種になろうと精子は争って、卵子と巡りあいたがっているのだろう。

 もしもこのファレンが子を宿すとなれば、なんて考えが貴海の頭を占めていった。幼い純潔を引き裂いて、胎の中にいくつもの子供が眠り、出産されていく。

 母となるファレンもきっと美しい。

 それを見たいと思う反面、まだふたりきりの暮らしを味わいたい気持ちもあった。どちらも美味いからこそ選べない。

 だからいまはファレンを、本人の同意をえながら犯していく。

「ふぁ、れん……!」

「にゃぅ……? う、にゃあぁ、にゃあ! にゅ、くぅ……!」

 こつん、とファレンの子宮口に貴海の雄が口づけた。それに反応してかファレンは足を折り曲げながらぴんとつま先を伸ばす。貴海はさらにファレンの脚を割り開いて、自身の体を前のめりにする。こつこつこつ、と何度も叩いていった。気の短い催促にファレンの体は哀れに震えるばかりだ。貴海に腕を回して背中を反らし、「んにゅぅ……!」「はぅあ! にゃ、にゃあぁぁ……!」と連続して達しているようだった。そのたびに貴海の精液を余さず搾り取ってしまいたそうに蠢動するのだから、たまらない。

 口によだれを溜めて、目の端からは涙をこぼしている。貴海はファレンの腰を支えている右手を外して、唾液をぬぐってやった。それもまた舐める。腹の中にファレンの唾液が沈み、焼いていくのがさらに煽ってくる。

「ファレン……! くぅ、あ……! だし、ていいか?」

 疑問はただの確認だ。一瞬の悩みは真実だが浅ましい自分はファレンが拒まないのを分かっている。拒めない、ではない。

 ファレンはふうわりと微笑んで、潤んだ瞳を細めた。

「にゃ、にゃぁ……うみ……。にぇーに、ちょうにゃい……?」

 どくんと、背中に灼熱の棒を入れられたような興奮が、一気に責めたててきた。

 気持ちわるい、吐き気がする。流れる汗は冷えたものになっているというのに雄性の象徴だけは萎えることを知らない。もっと、口を開けとファレンの大切な部分をせっついている。

 胎の中に精液を注ぎ込みながらぶちまけてしまいたいのだと、貴海は知っていた。

「ファレン……すきだ」

 腰の動きを早くする。ファレンの細いくびれをつかんで動かないようにがっちりと固定した。また、子宮の入り口と雄がぶつかりあう。その時のこすれた快楽が火花だった。

 貴海は、獣のごとく息を吐く。「は、ふぅー……」と荒い呼吸をしながら射精した。白い液体は、一度では収まらずに何度もファレンの中を白く染めていく。

「にゃ! にゃぁ……! はぅあうぁ! みゃぁ――!」

 普段はこれほど出すことのない、憐れを誘う甘い声を上げて、ファレンもひときわ強く達した。貴海はファレンの体を抱きしめて熱を分け合う。

 は、ふぅ、はぁぁ、ふぅ――と湯だった吐息が貴海の胸を、ファレンの頬をかすめていた。

 どちらからでもない。紫煙と金色の視線は吸い寄せられていき、唇が重なる。ぷちゅ、と隙間から気の抜ける音がした。

 貴海はくすり、と笑い、まだ衰えを示さない雄をファレンの中で一周させる。ファレンは貴海の背中に腕を回したままだ。

「抜かずの三発は、堅いか……」

 そんなひとでなしの発言をしたのだが、ファレンは聞いているのかいないのかわからないまま、俺に抱かれて満ち足りているようだった。

 ファレンが子を孕むかどうかは分からない。今日のことはうたかたの夢のように消えてしまうのかもしれない。明日、起きたらいつものファレンが腕の中にいる。

 そうであってもなくても、ファレンがいてくれるならなんだっていい。

「愛している」

 耳元でささやいたあとに、貴海はまた律動を再開した。

 ファレンは貴海の背中に消えない痕を残していく。貴海は、その痛みに眉を寄せるが、決して不快から生まれる表情ではなかった。歯を立てた獲物を舐めるような行為は繰り返される。

 夜は甘く熟されていった。

 

 

2017.12.30 初出