ずっとそばにいられたら

 

 三時の甘味を味わい終えた昼下がりのことだ。

 台所の流しで国広が皿を洗い、光忠が洗われた皿を乾いた布で拭く。その繰り返しをしているときに光忠が言った。

「君たちの仲は聞いていたよりもクールだよね」

 堀川国広を含む関係を主題にされて思い浮かぶ相手は、同じ派である山伏国広や山姥切国広、同属であった加州清光や大和守安定などがいる。しかし、国広が真っ先に浮かべた相手は彼らではなかった。

「僕と……兼さんですか?」

 うん、と光忠がうなずく。国広は蛇口から出る水を冷たく、心地よいと同時にそれを不思議に思う。

僕と兼さんの関係はこの水のようなのかと、考えてしまった。透き通って熱のない関係性だとしたら。

光忠は手を止めた国広に、自分が伝えたいことを説明し始めた。

「なんだろう、もっとお互いを意識しているように聞いていたからかな。実際に見てみるとそれほど一緒にいるわけでもないのに、でも絆はきちんとある。いいよね」

「そう言われると照れます」

 国広はきゅっと皿を泡立った布で洗い、水で流す。光忠は泡の流された皿を受け取って少しずつ湿りだした布で拭いた。

 国広は最後の皿を洗い終えて光忠に渡し、清められた皿を棚にしまうため持ち上げながら、光忠の後ろを通りながら言った。

「僕にも仕事はありますし、兼さんも若い刀ですけど子どもではありませんから」

 国広は軽く眉を寄せて笑う。

 

 

 国広は兼定と一緒にとあてがわれた自室に向かうあいだ、先ほどの光忠と交わした話の内容を思い出していた。

 クール、か。

 埃がたまらない、いつ歩いても滑らかな木の板の感触を靴下ごしに感じながら廊下を歩いていると「鶴丸殿!」というはっきりとした声が聞こえた。

 国広が声の聞こえていた場所を探して、ひょっこりと顔をのぞかせると、粟田口兄弟を背にして一期一振が鶴丸国永に厳しい顔を向けていた。だがその厳しさには敵意や悪意や害意はまったくない。悪ふざけをしていたものをたしなめる保護者の表情だ。

 鶴丸は謝りながら器用に笑っている。その表情と態度が嫌味にならないものだ。一期はしばらく鶴丸を見つめていたが、ため息をついて、粟田口兄弟をあそばせに行かせた。粟田口兄弟たちは仲良く庭の障害物のない場所へ散っていく。鶴丸はその様子を見送ってから一期に話しかけた。一期も物腰を柔らかいものに戻して、鶴丸に微笑みかける。その空気にはまた不思議な親しさがあった。

 ああ、と国広にはその空気の意味が分かる。

 燭台切さんが言っていたのはいまのようなことなのだろうな。僕と兼さんは仲が良い。だけれど、あの二人のようなじゃれあい。といったら失礼かもしれないけれど。そういうことを僕たちがしているところを見かけていないからなのだろう。

 それは、兼さんが聞いたら怒るだろうけれど。僕から見たら兼さんはかわいくてしかたない人だからたいていのわがままは許容してしまう。結果として、ぶつかり合うことがあまりない。ただ、怒ったり止めたりする必要があるときはする。

 それはそれでいいのだけれど。

 僕は、クールなんて言われるほど大人びた整理をまだできていないのに。以前ほど兼さんにじゃれつけない理由もある。

 一期と鶴丸から視線を移して国広は歩きだそうとする。

「国広」

 踏み出すより先に、後ろから声をかけられた国広だが、特に驚かなかった。いつもの表情で振り向いた。

一音を聞いただけで誰から呼ばれたかなど分かる。この人の声を決して間違えたりなんてしない。

「どうしたの、兼さん」

 振り向いた先にいる和泉守兼定は出陣の際の格好をしていた。昼を過ぎたころはまだ内番の格好だったはずだ、と国広は思い返す。その格好のまま獅子王たちなどと話をしていた。

 いつのまに、誰が兼さんの着替えを手伝ったのかな。

 そのことを考えるだけで、国広の心をぼんやりとした靄が覆いかぶさってくる気がした。

 兼定は国広に言う。

「出陣行ってくる。そんな時間かからねーだろうけど」

「今日、兼さんの番だったかな」

 国広も兼定と同時に出陣することが多く、そうではないとしても相棒の予定は把握している。その中に今日の予定はなかったはずだ。国広の疑問を兼定の説明が解消する。

「依頼札が足りないから取ってこいってよ」

 兼定はふう、とつまらなさそうな息をついた。依頼札が入手できる時代の敵は兼定には物足りないのだろう。だいぶ初期に顕現した兼定の練度は高い。

 国広は、兼定が自分に声をかけてきた理由は、自分も出陣に組み込まれたためかと考えた。

「僕は」

 兼定の言葉が国広を遮る。

「お前は留守番。頼むぜ」

 ああ、そっか。

 国広は一瞬だけ浮かんだ無表情をすぐに変えて、兼定に笑顔を向ける。

「わかった、気をつけてね」

「おう」

 会話はそれで終わり、兼定国広の横を通り過ぎていく。その背中を、いつも凛とまっすぐ伸びている後姿を国広はずっと見送っていた。

 今日は隣に並べない。それを思うとむなしくなってしまう。

 国広は一度、頬を叩いて気合を入れなおすと決めた。

「洗濯でもしよう」

 さいわいなことに今日も晴れている。小物くらいならばすぐに乾くだろうから、いまからでも大丈夫だ。

 

 

 気の紛らわしである洗濯は予想以上に早く終わってしまった。

 はたはたと薄くなりだした青い空の下に揺れる、色とりどりの巾着や白い手ぬぐいなどをながめながら、国広は縁側でぼけっとしていた。

 いい天気だとは思う。だが、広がる空を見ても気分は晴れない。

 両膝の上に両肘をついて頬に手を当てている国広の後ろできゅ、と音が鳴る。二人分の目的ある足音を聞いていた堀川は振り向かない。

「予想どおり」

 清光の呆れた声が聞こえてきた。それにも国広は振り返らない。気遣って微笑む必要がない関係も楽といったら楽だ。それ以上の仲の進展はないだろうが、国広も加州と安定の関係を邪魔したいとは欠片も思っていないのでかまわなかった。

 いつもより薬包紙に包まず清光に言葉を返す。

「なにが予想通りなの」

「和泉守がいないからふぬけてるね」

「当たり前だよ」

 胸を張れる事実ではないが、国広も兼定の見えないところではだいぶ緩む。真面目な根であるため明らかに手を抜くことはできないが、多少はざっくばらんに物事にあたる。兼定といるとそうではないのは、気分が高揚したり穏やかになったりするため、てきぱき動き回ったり余裕を持っているようにふるまうよう意識してしまうためだ。兼定がいないと電源が切り替わるように、抜けてしまう。

 やっぱり、僕は兼さんを何よりも大事にしているのだろうな。

 国広は思いながら、清光と安定へゆっくりと首だけを向けた。

自身と兼定と同様に、同じ主の下で戦ってきたこの二刀は仲が良いのか悪いのかは分からないが一緒にいることは多い。そして、この二人の関係もなかなかさっぱりとしている。他愛のないことで喧嘩もするというのに気がつくと並んでいる。だが互いに違うところにいても気にしない。

 それを信頼と呼ぶのかという考えが浮かんだ国広は、ふと口にしてしまった。

「僕と兼さんの関係はクールなのかな」

 国広が尋ねたことに対して清光はいやそうな顔をする。

「あんなにべったりしてんのに、なに言ってんの」

「そうだよね」

 清光と安定は目を合わせた。国広がそこそこ面倒な領域に沈みかけているという合図だ。厄介なことに巻き込まれるのを覚悟して引っ張り出すほどの親切心は二人ともないが、放っておくのもまた手間であるため、清光は国広の左に、安定は右に腰を下ろす。話は聞くだけ聞くという姿勢だ。国広も二人の気づかいを理解しているため、ごまかさずにはっきりと漏らす。

「兼さん、昔ほど僕に甘えなくなったなって」

 人の体に宿ったばかりのころは四六時中一緒にいたが、徐々に兼定も一人でできることが増えていき、思いだしてみると今日のように出陣で別れることも多くなっていた。それでも、誰よりも一緒にいると信じ込んでいたのは僕だけなのかもしれない。

 それ以上に、国広は兼定から様々な意味で手を伸ばされることが少なくなったように思える。兼定といまさっき交わしたことが良い例だ。

 兼さんが僕の名前を呼ぶよりも僕が兼さんのことを呼んでいる。それはまだいい。国広が病んでいるのは別のことだ。

「兼さんが僕を必要としなくなっていくことが」

「さみしいの?」

「つらい」

 安定の問いに国広はため息と一緒に答えを吐き出した。

 清光と安定は予想以上に国広が弱っているようだとまた目を合わせる。国広はじっと地面に視線を縫いつけたままだ。

 そのまま本音をまたこぼす。

「兼さんの世界に、もう少しだけ僕がいたらいいのに」

「なら本人にそう言えばいいじゃん」

 国広は黙る。

 乞うけれど、願ってしまうけれど、はっきりと伝えるのはいやだった。僕がこんな情けないことを考えていると知っても兼さんは見下げないだろう。だけれど、僕の矜持として言うことができない。

 堀川国広は和泉守兼定にふさわしい相棒でいたいから。

 もうひとつ兼さんは、僕が思っている以上には僕を必要としているけれど、それは僕が望むほど強くないのを認めてしまうから。

 清光と安定も黙り込む。しかし席は立たない。

 二人が落ち込む国広にできることはそれしかなかった。

 

 

 国広は朝の身支度を終え、いまだ横で長い黒髪を散らして眠っている兼定を眺めた。いつ見てもきれいだなあとしみじみしてから、名前を呼ぶ。

「兼さん」

「ん……」

 兼定はもぞもぞと身を丸くしてから、くてっと国広がいる向きに横になって目を開く。国広は変わらず澄んでいる浅黄の瞳に胸を高鳴らせた。

 今日、兼さんの目に最初に映ったのは僕だ。

「くにひろ?」

「そろそろ起きよう」

「ねみい」

 言う兼定の口元は幸せそうに緩んでいる。布団の心地よさが国広にも伝染してくるようだ。

 国広は息を一つ吐いて、場に緊張感をもたらせた。兼定はまた閉じていた瞳を開ける。うっすらと潤んでいる瞳に欲を覚えながらも国広は兼定の耳元に唇を寄せてささやいた。

「起きよう?」

 国広が吐息をかすめさせると、兼定は目を見開き、急に覚醒をしたのか、ばっと跳ね起きた。

「なにしやがる!?」

「いやだった?」

 あえて首をかたむけながら憂いを含ませた響きで問いかけるが、声は静かだ。兼定は国広の様子に落ちついたのか、たじろいだのかものものと布団を握りしめ、そのまま起きようとする。

 国広は兼定の腕をつかんだ。

 理由はあまりないように思っているであろう国広のとっさの動きに、兼定は困っている。

 国広にもその惑いが雰囲気を介して伝えられる。

 僕は何をしてるんだろう。いま、兼さんを困らせているのは僕の問題で。

「くーにーひーろー」

 だだをこねて困らせて。これでは普段と立場が逆ではないか。

 国広が自身の考えに沈んでいるあいだに兼定も「んー」と首をかしげて考えた。

 気が付くと、国広の世界は反転していた。

近い距離にあるのは兼さんの整った顔で、頬をくすぐるのは兼さんの滝のように豪奢な黒い髪だ。

そのことを理解すると国広は急に身動きがとれなくなる。

「てい」

「わ!」

 さらにのしかかられて、いい匂いがするけど兼さんやめてほしい。心臓に悪い。

 ばくばくと速さを増す鼓動を感じながら国広は兼定を見上げた。兼定もじっと国広を見つめている。互いの姿が鏡写しのように瞳に映りあう。

 兼定はしばらく国広を押し倒していた。国広が何事も口にしないのを確かめてから言いだす。

「お前、ためすぎ」

 きっぱりとした一言だった。

「もっと、オレにもわかるようにちゃんと言えよ」

「……うん」

 兼さんやっぱりいい薫りしているなあ、だけど。兼さんに許されても何も言えないのが僕だな、と苦笑するしかできない。

 僕に対することの許容範囲が広すぎる、兼さんの器に甘えきっている。情けないと分かっていても、どうしようもない。

 

 

 なんとなく変な雰囲気が漂っている。

 国広はそれを自覚していたが改善策が見つからず、黙々と朝食を摂っていた。向かいには兼定がいる。

「おい、国広」

「ん?」

「いくらなんでもかけすぎじゃねえか?」

 国広は手元の副菜を見た。大葉とミョウガが薬味として添えられている冷奴にしょうゆの海ができている。

 国広はいつもの微笑で「そうだね」と場にそぐわない答えを返し、しょうゆをかけ過ぎた冷奴を口に運ぶ。

 じゅわりと濃すぎる塩の味が国広の口内に広がっていった。いつもとは違うその様子を卓についている他のものも思わず見てしまっているのにも、いまの国広は気づかない。

 兼定は箸を止めて国広を見ていたが、しょうゆをかけすぎた国広の冷奴を一かけらつまみ、口に運んだ。眉間にしわができる。

「たべないほうがいいぞ」

「そうだね」

 また、苦笑して答えながらも国広は膳のものをすべて綺麗に食べ終えた。箸を置く。

「ごちそうさま」

 兼定を残して、先に卓から離れる。

 一人になりたかった。

 一人でいないと駄目な気がしていた。

 ねえ、兼さん。

 

 

 食事部屋から出ていった国広をいくつもの視線が追いかけたあと、兼定に集中した。

「和泉守」

 加州が遠まわしに疑問符を浮かべて問いかけるが兼定も答えはもっていない。口にできる答えは一つだけだ。

「オレはなにもしてねえ」

 そのあとは誰も言葉を発さず、黙々と食事が進む。兼定も国広が出ていった場所を見つめ、普段よりもせわしなく食事をすませていく。途中で光忠が食後の甘味を出すが、それは辞退する。

「ちょっとでてくる」

「はいはい」

 慣れた様子で答える安定たちに軽く手を振って見送られ、兼定は自室に戻った。そこに国広の姿もいた気配もない。

 兼定はしばらく考えて、ふと庭に目をやった。

 木の下に人影が見えた気がしたので、そこに向かう。

 あいつはなにを考えているのか。

 なあ、国広。

 

 

 国広は庭のさらに奥にある場所をかきわけて、座れそうな石に腰をおろした。

 遠くで鳥の鳴く声がする。朝の気配はまだ濃密だ。空の色も濃さはなくうっすらと色づきだした水の色だ。その色から、兼定の瞳を思い出して国広の心中はまた靄がかかったようになる。

 一人になりたいのに一人がいやだ。一人でいたほうがいいのに一人はいやだ。

 それよりも兼さんにみっともないところを見せる自分もいやだ。

 だけど、僕以外を見る兼さんも。

 そこから先は続けられなかった。続けてしまったら大切なものが壊れてしまう気がした。

 僕は兼さんを否定したくない。

「国広!」

 ぐるぐるとした思考の渦に国広が落ちかけたとき、聞き違えるはずのない声が届いてきた。視線をやると、兼定が腕を組んで低い垣根の近くに立っている。

「かね……さん」

 もう食べ終わったの。はやい。

 国広は思いながら、いまの空の色によく似た兼定の瞳を見つめる。兼定はいつもまっすぐに人を見る。下げたりよけたりしない。堂々としている。

 いまも国広が先に目をそらそうとしたのだが、兼定は迂回して垣根を越えると石に座った国広に視線を合わせるようにしゃがみこんだ。

「おまえ、どうした」

「どうもしてないよ」

「なら、なんで落ちこんでるんだよ」

 唇を尖らせるしぐさは子どもによく似ていて、実際に無邪気なところも兼定にはまだ強く残っている。

 だが、国広が抱くような澱みはない。

 兼さんはいつも自らを信じている。揺らがない。この前も重大な変化が起きたというのに不敵に笑って「わかった」の一言ですませた。

 曖昧な堀川国広と違って、和泉守兼定は確固としてある。それは和泉守兼定だけのものではなく、堀川国広が安定するのにも必要なものだ。

 依存、と言われてしまえば微苦笑するしかない。

 だけど僕はそんな兼さんの隣にいられることが誇りで、執着の元になってしまっている。

 こんなみっともないことを、言えやしない。

 国広は言葉を待つ兼定にただほろ苦く笑った。口をきゅっと閉ざして笑みの形にする。

 兼定は国広が口を割らないと悟ったのか、少しだけ顔をそむけながら、視線は国広に向けて言った。

「今朝のデザート、オレは食べられなかったんだからな」

「うん」

「それよりお前が気になったから。国広のばあか」

 あまりにも幼い内容だった。年は上であっても、自分より若い外見に言えることだろうか。そんな、子どもみたいに。

 庇護するものの抱える不安を察して、でもその内容はわからないからもどかしく、安心しろとだけ遠まわしに伝えてくる。

兼さんの、信頼と愛情が僕にはひどくくすぐったかった。

ああ、僕は本当にばかだね。それだけがこんなに嬉しくて。同時に抱く欲も深くなる。

「兼さん」

 こうして名前を呼んで近づいて、頬に手を添えることができるだけで、どれほどの幸福なのだろうか。

「僕は兼さんが好きだよ」

「おう」

 当たり前だと笑う兼定の笑顔は国広には眩しく、無垢に映った。

 それでいい。きっと兼さんは僕とは違う綺麗なものでできているから。愛されることは当然であるため、それだけ愛情で満ちている。僕にも分け与えられるほどに。人はそれを傲慢だと思うかもしれないけれど、僕はずっと、そんな兼さんでいてほしい。

「で、お前のためてたことってなんだよ」

「もう大丈夫だから」

 おそらく割り切れた。

 国広の中で兼定への思いは、もとの透明に戻った気がした。

 

 

 今日も兼さんは出陣で僕は疲労のため、本丸に戻された。

 話を聞き終えた清光と安定は呆れているだろうと国広は予想する。様子を見ると清光はあからさまに、安定は遠くを見ながら呆れていた。

「結局なにも進んでないのは分かったけどさ」

「和泉守があんなんになったのはお前のせいじゃないの?」

 国広は清光が言ったことの意味を考える。

 付喪神として目覚めた兼さんと意思を通じ合わせられるようになったのは、おそらく僕が誰よりもはやい。それだけ兼さんに関わってきた。ということは、兼さんに注がれている愛情のそこそこは。いや、はっきりと言おう。兼さんを安定させている愛情は僕が与えた。

 で、そうなった兼さんが離れていくことに僕は寂しさを覚えている。だったら。

「もっと無意識に束縛したらいいのかな」

 真剣な顔をしてその結論を出した国広に対して清光と安定は匙を投げた。気付かなかったことを指摘された国広は再び考えこむ。それから、すっと顔を上げて刀剣男士を跳ばす敷地まで走り出した。

「国広!」

「兼さん!」

 出陣から戻ってきた、僕を呼ぶ兼さんの姿はやっぱり格好よくて。

 僕は偽りなくずっとその隣にいたいと思ったんだ。